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2004年(平16)10月14日 議会レポのロゴ No.235

条例等の立法指針の策定を(3)

 議会での一般質問の続きを紹介します。

「さて、私は昨年の12月議会で、コンプライアンス、法令遵守の観点で質問をしました。その重要性は市長もお分かりかと思います。もとより、公務員は法を遵守する義務がありますから、その点からひとつ質問をいたします。

私もつい最近判決を知ったのですが、2年前に福岡地裁で条例に基づかない附属機関に対する公金支出は違法の判決が出ました。何が問題になったかですが、そもそも、地方自治法203条の5に「報酬、費用弁償および期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」となっています。そして、附属機関の設置については、第138条の4の3項に条例での設置が義務付けられています。

つまり条例で設置されている附属機関でなければ、報酬を支払うことは違法ということです。地方自治法は私もよく目を通しますから、条項そのものは知っていましたが、この辺は言わばグレーゾーンの部分が多く、今回の判決は、その部分に光を差したといえるでしょう。

芦屋市にも規則、要綱等で設置されている附属機関らしきものがたくさん見受けられます。これは法で言うところの附属機関ではないかと私が尋ねても、これまでも「附属機関でなく私的諮問機関です」と言い、今日も多分同じ事を言われるのでしょう。しかし、判決に照らしてそういいきれる状況に今もあるのでしょうか。
仮に私的諮問機関としても予算執行上、現状で違法性はないのかはなはだ疑問の点があります。
福岡地裁判決内容に照らして芦屋では問題のある点はないのかお尋ねします。法令に関していくつかお尋ねしましたが、やはり根本にあるのは、市としてどのような立法指針で条例等を定めていくかが不明確なところに、今の問題があると私は認識しているところです。

高知県の指針、ぜひとも参考にし芦屋市の条例等の立法指針を策定すべきと思いますが、市長の見解をお聞きしたいと思います。また、要綱行政からの脱却が急がれるとの認識を持っていますので、立法指針制定をまつ事なく、要綱についてはその制定活用についての指針がすぐにでも必要と考えます。この点にもお答えいただきたい。

 さて、質問の最後は法制担当者の充実についてです。法令の整備が重要なことはご理解頂けたと思いますが、それを担う担当者の負担は相当なものです。もちろんどの部署も同じだとは思いますが、とりわけ議会との関係で言えばやはりその充実は、私は指摘をしなければならないと思っています。法制担当者の充実についてはいかがでしょうか。」

 当局の答弁は、これまでと変わらず、「私的諮問機関」に終始しましたが、今後見直しをしていく趣旨の発言もあり、期待したいところです。担当者も矛盾点は理解していただいていると思うのですが、そこは組織ですので「近隣都市」との並びもあるのでしょう、矛盾を認め修正をしていくのには時間がかかりそうです。
 しかし、だからと言って「仕方ないですね」ではすみませんので、今後も行政の動きをチェックしていきたいと思います。

 具体的にどんな問題があるかというと、例えば、「私的諮問機関」と主張する要綱で設置された「市行政評価委員会」や「人権教育・人権啓発推進懇話会」等の委員には報酬をだしています。これは、自治法203条の5に「報酬、費用弁償および期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」に反します。
別の委員会の設置要綱には、「報酬を支給する」やまた他の設置要綱には「旅費(これは費用弁償に該当)を支給する」などの文言も見られたり、他自治体では附属機関として扱っている「入札監視委員会」や「指定管理者選定委員会」を規則で設置したりと附属機関と私的諮問機関の区別を当局も明確に区分できていません。まさに、ここに大きな問題点があります。

 福岡地裁の判決では、条例に基づかない委員会や審議会等の委員に法主や費用弁償を支給するのは違法として、町長に570万円の返還を命じています。

 高知県が制定した立法指針の中では、

要綱の問題点

1、 要綱によって規定された正当性が分かりにくい
要綱だけをみても、法令などとの関係や当該要綱が担う役割が分からないものが多く、本当に要綱により規定する内容なのか、要綱の範疇を逸脱していないかどうかの判断が困難な場合があります。

2、 体系的な管理が不十分
要綱は、条例や規則のように法制担当課のチェックも制度化されておらず、また庁内で統一的な管理のシステムがないため、個々の要綱の内容が不統一で、また全体的な把握が困難な状況です。

3、 公平性・透明性が保障されにくい
条例・規則のように県公報や、県法規集への登載がルール化されておらず、県民の目に触れにくいため、公平性・透明性の観点から問題があります。

県庁内の個々の政策を実施する担当課は、政策の推進の方法として、条例によらず、予算やそれに基づく要綱で対応しようとする傾向があります。
このような条例化への県庁内の意識を改革し、政策法務の推進に県庁全体で取り組んでいく手段として、高知県庁として、何を条例化し、何を規則として整備するのかを明らかにする「条例等の立法指針」の策定が必要となります。
その理由は、この指針に従って全庁的に取り組む意思を明示し、それぞれ指針に沿って政策担当課が必要な条例等の制定に取り組むことにより、以下のことが可能となるからです。

ア 条例・規則に対する職員の意識の変化
イ 事例を重ねることによる条例・規則の整備プロセスへの慣れ
ウ これらの過程により、県庁全体の政策法務能力が高まる

と、記してありますが、この姿勢を芦屋市にも持ってほしいところです。

 高知県だけではありません。他の自治体でも、「要綱制定の際の基準を明確化」したり、「要綱等に基づいて設置されたのもで、調停、審査、答申または調査を行うものは、すみやかに既存の附属機関との統合または条例を根拠とする附属機関への移行」を打ち出しています。
 違法とはあえて断言しませんが、不法な状況にあるのは否めません。現状の改善と、立法指針の明確化を今後も求めていきたいと思います。

(市会議員・中島健一)

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